先日ニュース記事で知ったのですが、パナソニックが自分の空間を作り出せるウェアラブル端末「WEAR SPACE」を開発中とのこと。
どんなものか簡単に説明すると
・視界を狭める形状をしたヘッドフォン型の端末
・ノイズキャンセリング機能により、視界だけでなく音を遮ることも可能
といった感じの製品のようです。
実は私も視線恐怖症・脇見恐怖症に悩んでいた頃、このような視界を遮れるものを作れないかと模索していたことがあります(個人なのでこんな大それたものではありませんが)。
改めて視線に関する悩みはごく一部の人だけのものではない、ということを認識させてもらいました。
目次
普及するために乗り越えなければならない壁
「職場に仕切り(パーティション)がほしい」
「作業に集中できないから人がいない場所で作業している」
といった声は私の身の回りでも何度か耳にしたことがありましたので需要は確実にあると思います。
しかし視線恐怖症・脇見恐怖症の方がこれをいきなり学校・職場で装着するのはなかなかハードルが高いと思います。
世の中に広く普及して、「身に着けている人がいるのが普通」という状況にならないと使用するのは難しいでしょう。
つまり、脇見恐怖症の方がこの端末の恩恵を受けるには、「WEAR SPACE」が広く認知され世の中に浸透することが不可欠です。
ではこのウェアラブル端末は普及するでしょうか。
コンセプトは申し分ないですし、需要も十分にある。
個人的には応援したい気持ちなのですが、以下の理由から実際はなかなか厳しいのではと思っています。
課題1:新しいものをゼロから普及させるのは大変
表題の通り、日々の生活で馴染みのないものを世の中に広めるのはなかなかに難しいものです。
日々様々な場所で開催されている技術展にいけば目新しい製品を限りなく目にすることができますが、それらが世の中に定着する確率はものすごく低いです。
ここ10年間くらいで新たに私たちの生活に入り込み定着したもの(ソフトウェア除く)、と言われて何を思い浮かべますか?
スマートフォン、ルンバ、スマートスピーカー、・・・
おそらく10個も出てこないのではないかと思います。
今や人々の暮らしに欠かせなくなったスマートフォンですら最初はかなり要らないもの扱いされていました。
携帯電話の進化系という位置づけだったのでゼロからのスタートでなかったにも関わらずです。
課題2:あからさまなデザインすぎて本気で悩んでいる人は着用しづらい
視線恐怖症・脇見恐怖症に悩んでいる方にとって、「自分が視線で悩んでいること」は極力他者に知られたくないものです。
「WEAR SPACE」を装着することは「私は視線に関するトラブルを抱えています」と周囲に伝える行為に等しいわけで、周りの人がこれを装着するのが当たり前の状況にならない限りなかなか装着する勇気は持てないのではないかと思います。
(周りの人はそこまで気にしないかもしれませんが、本人は気にするでしょう)
図書館・シェアオフィスなど、見ず知らずの人しかいない場であれば周囲の目を気にせず装着できるのかもしれませんが、悩みの主戦場である職場で装着しづらければ意味がありません。
※以前紹介した視界を狭めるチャイルドビジョン。これよりは100倍自然なデザインですが・・・
課題3:10代の若い人から広まることが期待できそうにない
これは当サイトを運営していて実感していることですが、視線に関する悩みを抱える人の多くは若い方たちです。
当サイトに問合せなどをいただくのも比較的若い方が多いです。
この端末が広がりを見せるとすればほぼ間違いなく若い層から、となるのでしょうが、そこから広がっていく姿が私には描けませんでした。
というのも、若い人が視線に関して悩む場のほとんどは「学校」ですが、これを学校で装着できるでしょうか?
あなたが学生だとして明日からこれを装着して授業を受けられるか想像してみてください。
装着した人はかなり浮いた存在になってしまいますし、そもそも「皆と同じであること」を重視する学校側が許可を出してくれない気もします。
課題4:値段が高い
現在実施中のクラウドファンディングに応援の意味も込めて出資しようかなと思ったのですが、今の私にはそこまで必要がないので¥29,000はちょっと高いなと感じました(脇見恐怖症が苦痛で仕方なかった頃なら迷わず買ったでしょうけど)。
上で述べた若い人たちにとって¥29,000という値段はかなり高いハードルになりそうです。
改善案:自然なデザインにし、売り方も工夫を
上で述べた通り、今まで世の中になかった全く新しいものを普及させるのはとても困難を伴うものです。
仮に成功したとしてもそこに至るまでにはかなり時間がかかります。
上記をふまえると
・全く新しいコンセプトのウェアラブル端末
として売り出すよりも
・ちょっと珍しい形のヘッドフォン
として身に着けても違和感がないデザイン(=「視界を塞ぐために身に着けています」感が感じられないデザイン)・売り方にすれば普及する確率はかなり高まるでしょう。
今現在身の回りにあって皆に馴染みのある”ヘッドフォン”であれば身に着けることへの抵抗感は少ないですから。
ただこの「違和感を感じさせずに視界を遮るデザイン」がなかなか難しく、私はここで断念しました。
「WEAR SPACE」も当然このあたりは考えたでしょうから、やはり違和感が残ってしまうのはやむを得ないのかもしれません。
※ちなみに近年横のフレーム部が太いメガネを着用する人が増えてきている(個人的な感想なので数字などは持っていませんが)と思いますが、これは「横の視界を塞ぎたい」という需要が一定数あるからだと思っています。
自然に取り入れられることが重要なのです。
さいごに
なんだか否定的な論調になってしまいましたが、「WEAR SPACE」のコンセプトには非常に共感しており、うまく普及してくれたらと強く願っています。
こんな製品が出てきてしまうくらい今の職場・働き方に不満を持っている人が多いわけですから
「視界に余計なものが入らないレイアウトの職場にしたらどうか」
「週5日フルで出勤する必要はあるのか?(リモートワークを推進したらどうか)」
といった、そもそもの問題に手を打つことも並行して進めるべきなのでしょうね。
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