アイトラッカー(視線追跡)を使って視線恐怖症患者の視線を分析
この実験は視線恐怖症を克服しようと試行錯誤しているときに色々と試したうちの1つです。
視線恐怖症の人と一般の人では
同じものを見ていても見ている場所や時間などに違いがあるのではないか
と思ったのがきっかけです。
どうにかして視線の動きを調べられないかと思い調べたところ、The Eye Tribe Trackerなるものがあるということで早速試してみることにしました。
※The Eye Tribe Trackerとは?
専用の機器とソフトを使用することで画面を見ている人の視線の動きを測定することができる装置です。
視線の動きを利用してPCの操作などもできるようです。
The Eye Tribe公式サイト(外部サイト)
この実験はEye Tribe Trackerの「画面上の画像に対する視線を計測できる」という性質上、実際に人と会ったときの反応を測れるわけではありません。
ですので視線恐怖症患者と一般人でそんなに違いは出ないだろうと内心思っていたのですが、結果は驚くべきものでした。
実験の条件
■被験者
A:一般人
B:視線恐怖症患者(まだ視線恐怖症だった頃の私です)
■実験方法
・複数枚の画像を連続で5秒ずつ見る(※一部除く)
・A⇒Bの順で実験を行う
・BはAの結果を知らない状態で実験を行う
・実験は周りに誰もいない状況で行う(※一部除く)
※条件が異なるものについては実験結果にて個別に説明します。
実験結果と考察
実験結果を見ていただく前に、結果の見方を説明しておきます。
■画像の順番
題材に使った画像⇒Aの結果⇒Bの結果の順です
■画像の見方
・円が描かれているところ:視線を向けた場所
・円の真ん中の数字:視線を向けた順番(1→2→3→・・・)
・円の大きさ:視線を向けていた時間。大きいほど長時間見つめていたことになる
ではさっそく結果を見てみましょう。
※一部画像はクリックで拡大できます
【画像1】
A(一般人)の結果
最初の視点以外は全て行きかう人を目で追っています
B(視線恐怖症患者)の結果
ほとんど真ん中しか見ていません。
※自分では写っている人をすべて見ているつもりです。
【画像2】
A(一般人)の結果
行きかう人、看板などまんべんなく見ています。
4番のように長い文字の看板を見るときは滞在時間が長いのがわかります。
B(視線恐怖症患者)の結果
この人はどこをみているのでしょうか・・・
見事なまでに人を見ていません。
5番は何も無い空に視線を逃がしているようにも見えます。
※こちらも人を見ているつもりだったのですが・・・
【画像3】
A(一般人)の結果
しっかり犬を見つめています。
ごく普通の反応、という気がします。
B(視線恐怖症患者)の結果
犬は見ていません。
犬の周りを見ています。
症状が酷いときは犬にも避けられている気がしていたのですが、もしかしたら本当に避けられていたのかもしれません・・・
A(一般人)の結果
まずぱっと目に付く人通りをみて、
それから周辺部を見渡す感じでしょうか。
B(視線恐怖症患者)の結果
また空をみています。
そして見事なまでに人通りを見ていない。
人通りの近くを見ています(犬のときと同じ感じでしょうか)。
※こちらも人通りを見ているつもりでしたが・・・
A(一般人)の結果
人、掲示板、気になったものは一通り見ています。
B(視線恐怖症患者)の結果
目のやり場に困っているようにしか見えません。
【画像6】
この画像だけ少し特殊な条件で測定しています。
※この画像は25秒間見ています
※右隣に人がいる状態で見ています(脇見恐怖症の実験も兼ねて)
A(一般人)の結果
真ん中→左→左上→右上→右下→左下→真ん中という順番でまんべんなく見ています。
右隣に人がいることはなんら影響を及ぼしていないように見えます。
B(視線恐怖症患者)の結果
結果からは心が乱れている様子が読み取れます(実際そうだったように思います)。
視線が真ん中に集中しています(対人恐怖症・視線恐怖症治療プログラムにある「視界を自ら制限している状態」ですね)。
56番は脇見恐怖症特有のチラ見でしょうか。
55番(真ん中)から一気に右端(56番)へ、そして57,58,59と左上に逃げている様子がはっきりと見て取れます。
(※数字が見づらい場合は画像クリックで拡大できます)
おわりに
いかがでしたでしょうか。
大きな成果を期待せずに始めた実験でしたが収穫は想像以上のものでした(アイトラッキング恐るべしですね)。
一般人は見たい物を欲求のままに見ている
ことがわかったのも大きいのですが、何より
自分は人を見ているつもりだったのに実は正視していなかった = 無意識のうちに人を避けていた
ここに気づくことができたのが最大の発見でした。
これは視線恐怖症に限らず”うつ病”や”対人恐怖症”の方にも同様の傾向が見られるかもしれません。
1点注意していただきたいのは、これは素人が行った実験であり、かつサンプル数もきわめて少ない状態で行われているものだということです。
私以外の視線恐怖症患者の方が同じ実験をしたら今回とは別の結果になるかもしれません。
あくまで参考程度に考えていただければ幸いです。
(追記)
関係がありそうな記事を見つけたのでご参考まで。
統合失調症を判別する眼球運動特徴の発見(大阪大学)
実験後に取り組んだこと、そこで得たこと
・実験後に私が取り組んだこと
・再実験の結果
・視線恐怖症患者が取り組むべきと感じたこと
については「対人恐怖症・視線恐怖症治療プログラム」を購入するとついてくる補助教材
「視線恐怖症患者の視線分析:他者との違いを理解し克服する」
にて詳しく紹介しています(ここにはない人間の顔を使用した実験結果もありますよ)。
本記事公開後、「the eye tribe trackerに興味がある」というコメントをいくつかいただきましたので、購入~実験までの手順を紹介するページを作りました。
興味がある方は見てみてください。
コメント