視線恐怖症を乗り越えてわかったこと2(被害妄想について)

視線恐怖症患者の被害報告はただの被害妄想なのか?

suffering
視線恐怖症・うつ病・対人恐怖症等の症状について調べていると、よく以下のようなやり取りに遭遇します。
「周りからの反応が辛いと言うが、それはあなたの妄想だ」
「いや妄想じゃない、実際にXXなんだから」

治療にあたり、周りから「妄想」「気のせい」と言われて悩んだ方も多いと思いますが、実際のところはどうなのでしょうか。

私の意見は「どちらも正解」です。

「妄想じゃない!」
⇒私が視線恐怖症だった頃と治った後を比べると、周囲の反応(目隠しされる・咳払いされる・他)は明らかに違います。
ですからこれは正しいです。
※「目隠し・咳払い」がそもそも害なのか、という話はここではいったん置いておくことにします

「被害妄想だ!」
⇒今から振り返ると明らかに被害妄想だったと思える記憶が多々あります。
したがってこれも正しいです。

ひとくくりにできない問題を〇か×かで決着させようとするから両者の主張が平行線をたどってしまうのだと思います。

被害妄想について、私の例を少しだけ紹介します。
当時の私は周囲の物や音にとにかく敏感で、自分の身の回りで起こった事象は全て自分に向けられているという妄想に取り憑かれていたように思います。

【例1】必ず私に目隠しする同僚

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職場で苦手な女性がいました。
なぜかというとその女性、私の席の前を通る時必ず手で目隠しをするのです。
完璧にやり過ごしたと思ったときですら必ず目隠ししていくので「どうしたらいいの」と敵意すらおぼえていました。

ところが治療がかなり進んだ段階になって私は大きな勘違いをしていることに気づきました。
彼女が目隠しをしている証だと思っていた肌色の物体は実はベージュの髪留めだったのです。

ちょっと勇気を出して目の焦点をあわせればすぐに気づけたはずなのに本当にバカみたいな話です。

ちなみにその女性とは今普通に会話できる関係です。
苦手意識や敵意などは全くありません。

【例2】トイレの個室から出られない

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職場にいるときは脇見恐怖症などもあり自席にずっと座っているのが辛く、よくトイレの個室に長時間こもっていました。

では個室にいる時間はリラックスできていたかというとそうでもありませんでした。

隣から聞こえてくる音が一つ一つ気になって仕方ないのです。

鼻息や咳払いの音に耐えられず耳を塞いだり、自分が音を立てた後に隣から音が聞こえてきた時は「自分の音に反応された」と感じてさらに音を立てたりしていました。

出るときも大変です。
個室から出るところを見られたくないという理由で人がいないタイミングをじっと待ったり

隣に同じく長時間滞在している人がいたら
「きっと隣の人は自分が出るタイミングに合わせて個室を出ようとしているに違いない」
「よしわかった!そういうことならお前(隣の人)が出るまで自分も出ない」
というわけのわからない思考に陥り、無意味に隣の人とトイレ滞在時間競争をしたりしていました(実際はただの独り相撲ですが・・・)。

今思うとこれらは完全に妄想で、頭がおかしいと言われても仕方ないと思います。

今はというと、隣から音は出ているのでしょうが、視線恐怖症が完治してからそんなこと一度も気にしたことはありません(そもそも音が出ていることに気づかない)。
個室も自分が出たいタイミングで自由に出ています。

被害妄想との正しい付き合い方

私の例、いかがでしょうか。
トイレの話をみてこれはひどいと思った方、安心してください。
こんな私ですら完治できたのできっとあなたも視線恐怖症を治すことができるはずです。

被害妄想について、1つはっきり言えるのは

被害妄想が実際の被害を増幅する一因になっている

ということです。

被害妄想が進めば進むほど周囲にひどく敏感になったり敵意を向けることになり、実害もそれに比例して増えていきます。
周囲の人からしたら「自分は何もしていないのになぜ敵意を向けられるの?」と理不尽な思いをするわけで、距離を置かれるのも仕方ない気はします。
ただの被害妄想にすぎなかったものが、実際の被害(事実)へと発展するわけです。

「自分は被害妄想なんかじゃない。周りが悪い」
と頑なになってしまうのではなく
「実被害があるのは確かだけど、もしかしたら中には勘違いしていたものもあるかもしれない。」
このくらいの気持ちでいたほうが良いでしょう。

・肌色を見れば目隠し
・音がすれば自分への攻撃

周囲で起こることを全て実害として認識していたら身も心もとてももちません。

事実と被害妄想を切り分けて現状を正しく認識し、事実(実被害)に対して何がまずかったのか客観的に分析を行うことが大切です。
事実の方にはほぼ必ず明確な原因があります。

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