「人と目を合わせたくない」歩きスマホ・ながらスマホ対策を考えるうえで見落とされがちなもう1つの原因


ここ数年で歩きスマホ・ながらスマホが原因の事故報道を目にする機会が多くなりました。
この問題、以前からずっと言われ続けており各所で注意喚起されているにも関わらずなかなか無くなる気配がありません。

「移動中くらいスマホはやめたらいいのに」
「スマホから目を話したら死ぬ病気なの?」

こんな風に白い眼を向けるのは簡単ですが、それだけでは問題は解決しません。

なぜ危険とわかっていながらやってしまうのか、その原因をもう少し深く考えてみたいと思います。

一般的に考えられている「歩きスマホ・ながらスマホをする理由」

歩きスマホ・ながらスマホをする人たちはなぜ危険だと知りながらやめられないのでしょうか。
まずは一般に考えられている理由から考えてみましょう。

【移動中にスマホを見る理由】
・楽しすぎて移動中もやめられない
・少しでも放っておくとゲーム内の順位が下がるから目を離せない
・SNSで常に誰かとつながっていないと不安
・知り合いからの連絡には他を差し置いていち早く反応すべきと思っている
・移動時間をニュースを読む時間にあてるなどして有効活用したい

【危険とわかっていながらもやめない理由】
・悪いことだと思っていない
・他人に迷惑をかけているという自覚がない
・スマホの楽しさが危険に対するリスクに勝ってしまう
・そもそも危険だと思っていない。自分は大丈夫だと思っている

他にもいろいろあるとは思いますが、大体こんな風に理解されているケースがほとんどかと思います。

歩きスマホ・ながらスマホをするもう1つの原因

上であげた理由が全て間違っているわけではないと思います。

・マナー・モラルが欠如している人
・自分だけは大丈夫と根拠なく考えている人
・事故によるリスクに思いを至らせることができない想像力のない人

そういう方はやはり一定数いるのでしょう。

ただ、これ以外にもう一つ大切な原因が見落とされていると私は考えています。

それは
「他人と目を合わせたくない」
という心理です。

以前伊達マスク(本来の目的以外でマスクを着用すること)が増えてきた話をしましたが、これと同じ理由でスマホに視線(意識)を逃がしている人が多いのではないかと考えています。

視線に敏感な若年層ほど歩きスマホ・ながらスマホの経験者が多い

スマホを所持している人を対象に行った調査(※)によると、歩きスマホ・ながらスマホをしたことがある人の割合は若い人ほど多くなる傾向があるそうです。
※(出典)歩きスマホへの危険意識は98.3%、20代の歩きスマホへの危険意識が低い結果に(外部サイト)

これは単に若い人の方がスマホに熱中しやすい、というだけでなく若い世代の方が周囲の視線に敏感であることも関係していると思うのです。

彼らにとって外で他人と目を合わせる行為は不快でしかないので
「だったら安心で楽しくて自分を裏切らないスマホを見よう」
と考えるのは自然なことなのかもしれません。

私自身、対人恐怖症・視線恐怖症だった頃は外を歩くのが苦痛でした。
結果的に歩きスマホに逃げることなく治すことができましたが
「携帯・スマホを見ていた方が絶対楽だろうな」
という誘惑にかられたことは何度もあります。

過去の私ほど重症でない人であっても”他人と目が合うこと”にストレスを感じる人はそれなりにいるはずで、そこにアプローチした対策をとらない限り歩きスマホ・ながらスマホを撲滅させることは難しいでしょう。

歩きスマホ・ながらスマホを防止するための対策2つ

ではそういった人たちが歩きスマホ・ながらスマホをしなくて済むにはどうすればよいのでしょうか。
対症療法的な対策と根本的な解決を目指す対策、それぞれ1つずつあげてみました。

△強制的にやめさせる

・厳罰化する
・そもそも移動中に端末をいじれないようにする
※例:GPSと連動させて移動中は操作できないようにするとか。「電車や助手席にいる場合はどうする?」といった課題は残りますが・・・

一般的によく語られている対策案です。
単に歩きスマホ・ながらスマホをやめさせるだけであれば、こういった案で十分に効果はあると思います(実際私もこういった対策をすべきと思っています)。

しかしこれだけでは彼らが歩きスマホをするに至った原因はそのまま手つかずで残ってしまいます。
今後スマホに代わって視線を逃がせるものが出てきたとき、また同じような問題が繰り返されるのは間違いないでしょう。

スマホそのものが原因ではない

今話したことをもう少し理解してもらうために、私がまだ子供だった頃の話をしましょう。

当時近所にとても内気な人がいました。
その人は自転車で通学していたのですが、私が見かけたときはいつも下を向いて走っていました。
周囲からは「危ないよ」と言われていましたが彼はそれをやめ(られ)ませんでした。
そしてある日高齢者と接触事故を起こして相手が骨折。大問題になりました。
まだ携帯もスマホもなかった時代の話です。

この話からもわかる通り、「スマホを操作できなくすれば解決」といった単純な問題ではないのです。

〇”他人と目が合うことへのストレス・恐怖心”を軽減させる

根本的な解決を目指すのであれば、上記対策と並行して彼らが「他人と目が合うのは嫌だ」と思わなくて済むようにするための対策も必要になります。

・他人と目が合うことの何がストレスなのか、原因を突き止め解決に導く手助けをする

これはすぐに効果が出るような対策ではありません。
また先ほどのように、全員に一律に適用できるような具体的な対策案があるわけでもありません。

「他人が怖い」「他人との接触を避けたい」といった感情を克服するには長い時間が必要ですし、そもそも他人が一方的に働きかけて解決する問題ではないからです。

しかしこれが最も確実かつ効果のある対策だと私は思っています。

「他人と目が合うのは嫌だけど、事故の危険を冒してまで避けなくてもいいか」
と思えるくらいまでストレス・恐怖心を軽減させることができれば、歩きスマホ・ながらスマホの何割かは無くすことができるはずです。

さいごに

歩きスマホ・ながらスマホは自分のみならず他人の人生をも狂わせる可能性がある危険な行為であり、当然許されるものではありません。
しかし彼らを一律に”非常識な許せない人達”と断じてしまっては根本的な解決は難しいでしょう。

「危ないからやめましょう」だけでなく、「なぜそうせざるを得ないのか」に思いを巡らせ、彼らを「生きづらさを感じながら日々を過ごしている人達」ととらえ、社会全体の問題として解決策を模索することが大切だと思っています。

当サイトも微力ながらその力になれればと願っています。

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