今回は正視恐怖症についてお話しします。

「人と話すときはちゃんと相手の目を見て話しなさい」
みなさまそう言われて育ってきたのではないでしょうか。

しかしながら
「人の目を見て話せない」
「普通に会話はできるがどうしても目を見て話すのは苦手」
という方、実は結構多く存在します。
私もその一人でした。

私の場合、人見知りというレベルをはるかに超えていて、他者との接触全般に苦痛を感じる状態にまで至り、生きることそのものが苦痛になっていました。

その後本格的に治療に向けた努力を続け完治させたのはこれまでにお話しした通りですが、今回はそんな私の経験から人の目を見て話すのが苦手な方向けに原因と治療法について紹介しようと思います。


目次

【正視恐怖症とは?】

【なぜ人の目を見て話さなければならないのか】

【人の目を見て話せない原因】
 ・原因1:自分自身に対するコンプレックス・劣等感がある
 ・原因2:相手の反応を見るのが怖い

【まずはこれだけ!今すぐできる対策4つ】
 ・対策1:ずっと相手の目を見る必要はない
 ・対策2:目を見ていない間は”鼻~あご”を見る
 ・対策3:相手の感情を過度に読み取ろうとしない
 ・対策4:会話のやり方に具体的な正解はないことを理解する
 ・補足:本当に伝えたいことがあるときはしっかりと相手の目を見ること

【正視恐怖症を根本的に治療したい方へ】
・正視恐怖症(視線恐怖症)を根本から治すには自分自身と深く向き合う必要がある

【まとめ】



正視恐怖症とは?

この言葉を初めて目にする方もいると思いますので、最初に正視恐怖症について簡単に紹介しておきます。

まず前提として、視線恐怖症という言葉があります。

これは
・他者(または自己)の視線が異常なまでに気になってしまい、日常生活に支障が出るレベルで辛さを感じる状態にあること
を指します。

そして正視恐怖症は視線恐怖症の一種で

・人と距離が近いときに、目を合わせることに恐怖を抱く症状である
(wikipedia内『視線恐怖症』より引用)

とされています。

目を見つめあうのはなんとなく苦手
という程度であれば軽度の人見知りで終わる話ですが

人がいる方向に目を向けることすら困難
人と顔を合わせるのが嫌で外出することが困難

という段階に達すると日常生活にも悪影響が出て、本人も生き苦しさを強く感じるようになります。



なぜ人の目を見て話さなければならないのか

原因と対策に入る前にそもそも、なぜ人の目を見て話さなければならないのか、改めて考えてみましょう。

人対人のコミュニケーションにおいて、目を合わせるという行為は

・あなたの話をちゃんと聞いています
・あなたのことを尊重しています

という意思表示になります。
そのため相手との信頼関係を築くうえでとても良い影響をもたらします。

逆に目を合わせず話をすると、人によっては

・この人は私を信頼していないのでは?
・何か後ろめたいことでもあるのか?
・自分の話がきちんと伝わっているか不安
・何を考えているかわからない

と感じることもあり、対人関係において悪い影響を受けやすいです。

冒頭の「相手の目を見て話をしなさい」にはそれなりに合理的な理由があるのです。
会話の間ずっと相手を凝視する必要はありませんが、ある程度相手の目を見て話すことはやはり大切です。

人の目を見て話すのが苦手な方は

目を合わせずに済ませる方法はないだろうか

という方向に思考が向かいがちですが、これは結果的に無駄に終わることがほとんどです。
こういった考えは問題の解決を先延ばしにするだけなので早々に捨て去るのが賢明です。



人の目を見て話せない原因

正視恐怖症(人の目を見て話すのが苦手)になる人がいる原因は何でしょうか。

・過去に嫌な思いをした
・物心ついた時から苦手
・理由はわからないが、気づいたら相手の顔を見れなくなっていた

具体的なきっかけは人それぞれですが、原因にはある程度傾向があります。

以下に主なものを2つあげましたが、両者に共通するのは

自分が他者からどのように見られているか過度に気にしている

という点です。



原因1:自分自身に対するコンプレックス・劣等感がある

自分自身への過度なコンプレックスや劣等感から自身を他者より劣る存在だと思い込んでしまい、相手と対等に向き合うことに恐怖を感じている状態です。

「自分のような〇〇な人間があの人と会話をするのはおこがましい」
「きっと相手から”〇〇だ”と思われて(笑われて)いる」

こういった感情を強く持つと、相手の視線が気になってしまい
・嘲笑
・見下した感情
・同情
等を(勝手に)感じるようになり、それに耐えられず相手を正視できなくなります。

また日々の態度にも自信がなくなり、いじめの原因になることもあります。

この劣等感、本人が強く自覚している場合もあれば無意識のうちに感じてしまっている場合もあります。
「自分はそんなに卑屈になっているつもりはないのに」と思っている方も注意が必要です。



原因2:相手の反応を見るのが怖い

自分自身が傷つくことへの恐怖心から、自己防衛反応として相手の目を見ないようにしている状態です。

「相手が嫌な顔をしたらどうしよう」
「笑顔で話してくれているけど内心は退屈しているのではないか」
「相手を楽しませなければ」

雑談のような無心で会話を楽しむ場面でもこのような考えが頭から離れない人はこちらに該当します。

会話のたびに強い不安感を感じることで他者との接触に苦手意識を持つようになり、最終的には

「どうせ傷つくのだったら最初から人と話さなければいい」

と他者との接触そのものを避けるようになります。

繊細な方、神経質な方に多い傾向がありますが、これがイコール原因ではないことには注意が必要です。



まずはこれだけ!今すぐできる対策4つ


正視恐怖症(視線恐怖症)を根本的に治療するのはとても時間がかかります。
詳細は後述しますが、自分自身と向き合いながら時間をかけて考え方や物事のとらえ方を変える作業が必要になりますので、数か月~長い方は数年費やすことになります。

そこでまずは誰にでもできる即効性のある対策を4つ紹介します。



対策1:ずっと相手の目を見る必要はない

・相手の目を見て話せない
という自覚がある人は「相手の目を見なければ」と気負ってしまいがちですが、それでは症状が重くなる一方です。

実際の会話においては、(他人同士の会話を観察すればわかると思うのですが)常に相手の目を見る必要はありません。

相手の目を見る必要があるポイントは突き詰めればとてもシンプルです。

・相手に何かを伝えたいとき
・相手があなたの反応(共感、同意、返事など)を求めているとき

以上、これだけです。
そこさえ押さえておけば、それ以外は必ずしも相手の目を見る必要はありません。

<具体例>
・話しかけるとき、話しかけられたとき
 →「〇〇さんすみません」「ちょっといい?」

・話題が切り替わるタイミング
 →「そういえば〇〇の件だけど・・・」

・何らかの意思表示や合意をするとき
 →「そうなんだ」「わかりました」「今回は遠慮します」「では明日10:00ということで」



対策2:目を見ていない間は”鼻~あご”を見る

ずっと相手の目を見る必要はないとして、目を見ていない間はどこを見ていれば良いのでしょうか。

そういうときは相手の顔周辺に視線と意識を向けるようにしてみてください。

特に決まりがあるわけではありませんが、相手の”鼻~あご(~首)”あたりを見るようにすると自然に会話している感じになります。
そして先ほどあげた大切なポイントでちらっと相手の目を見ることができれば完璧です。



対策3:相手の感情を過度に読み取ろうとしない

「自分なんかと話していてつまらないと思っていないだろうか」
「今は楽しそうにしているけど、自分の一言で場の雰囲気が盛り下がったらどうしよう」
「空気が読めない人だと思われたくない」

人の目を見て話せない人はこのようなことを過度に気にする傾向にあります。

症状がひどいと
「表面上楽しそうにしているけど本当はつまらないと思っているに違いない」
といった被害妄想(加害妄想)に発展し、人間関係にも悪影響を及ぼすようになります。

人と対面するときにあれこれ考えてしまう人は、まずこの相手の心の先読み行為をやめるよう心掛けてみましょう。

相手が何を考えているかなんて、考え方次第でいくらでも悪い方に想像できてしまいます。

相手の思考は本人にしかわからないんだから思い悩むだけ無駄だと割り切る姿勢が大切です。



対策4:会話のやり方に具体的な正解はないことを理解する

「自分がうまく目を合わせられないのは会話の正しいやり方を知らないからだ」
と思い込む人がしばしばいますが、これは誤りです。

上記で述べた対策のような大雑把な方針は知っておくべきですが、どこを何秒見つめて・・・といった細かいルールは必要ありません。

他の人がそこまで考えて会話しているか、少し考えてみればわかるはずです。
みな細かいことは意識せず、それぞれのやり方で日々を過ごしています。

他者との会話に自信を失うと自身の挙動一つ一つに疑問を持ってしまいがちですが、そこは気にすべきポイントではないことを理解してください。



補足:本当に伝えたいことがあるときはしっかりと相手の目を見ること

対策から少し話がそれますが、「これは確実に相手に伝えたい」と思ったときはきちんと相手の目を見て話すようにしましょう。
意志をもって伝えると相手への伝わり方も全然違います。

例えば、これまであいさつしても他の人と比べて周囲の反応が薄かったり気づいてもらえなかったりした経験はないでしょうか。
これはあなたの存在感が薄いからではなく、あなたの相手に伝えようとする意志が弱かったからです。

相手の目を見てはっきりと意思を伝えれば、たいていの人はきちんと答えてくれます。

症状が重いうちは無理して行う必要はありませんが、治療が進んである程度楽になってきたら意識してみてください。



正視恐怖症を根本的に治療したい方へ

上で述べたような対策で問題が解決する方は比較的軽症です。

重症になると、たとえ顔周辺に視線を向けるだけであっても一定時間以上相手を正視することに耐えられず目をそらしてしまう。
そしてそんな自分を恥じ、責めてしまう。
このような悪循環を繰り返し症状はどんどん重くなっていきます。

この状態に至ると、ちょっとした対策程度では絶対に治りません。
経験者の方ならわかると思いますが

「相手から視線をそらしてはいけない」

と思ってもどうにもなりません。
自然と目がよそを向いてしまうのです。
だって怖いものは怖いですから。

ここからは表面的なテクニックではなく、根本的な原因を取り除くためのしっかりとした対策が求められます。



正視恐怖症(視線恐怖症)を根本から治すには自分自身と深く向き合う必要がある

あなたが相手から目をそらすとき、表面上は相手から逃げているように見えますが実態はあなた自身から逃げている、というのが正しい認識です。

問題は他者にあるのではなくあなたの内面にあります。
そして正視恐怖症(視線恐怖症)を根本から治したいのであれば、そこに正面から向き合う覚悟が必要です。

そのためにまずあなたがすべきことは、徹底した自己との向き合いです。
なぜ目を見て話すことができないのか、原因を徹底的に突き詰めて考えてみてください。

その際大切なのが、自分自身の心を偽らないことです。

原因をたどっていく過程で自分自身直視したくない(しないようにしていた)問題に必ず突き当たるはずです。
そこに正直に向き合うことで根治への道が開かれます。



まとめ

正視恐怖症についてご理解いただけましたでしょうか。
当記事で正視恐怖症(視線恐怖症)という言葉に初めて出会った方は、同じように悩んでいる人がたくさんいることに安心されたのではないかと思います。
これを機に視線恐怖症に対する正しい認識を身に着け、治療に向けた歩みを始めてみてはいかがでしょうか。

上記4つの対策に共通しているのは
・細かいことで悩みすぎないこと
・「人の目を見て話さなければ」という気負いを捨てること
です。

そして根本的な治療に向けて必要なのは自分自身の内面を徹底的に理詰めで追及することです。
当記事では触れませんでしたが、何をすべきかさらに詳しく知りたい方は引き続き以下記事に進んでいただければと思います。
>視線恐怖症とは? 原因と治し方



■参考
>対人恐怖症・視線恐怖症治療プログラムのご紹介

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